今回のジャズピアニストはこの方。
Jazz Piano
ハロルド・メイバーン
Harold Mabern (1936-)
■USA
「この重量感、そして緊張感 『一音入魂』こそが彼の魅力」
バイオグラフィー
1936年3月20日テネシー州メンフィス生まれ
58年にウォルター・パーキンス率いるMJT+3に参加以来、60年以上にわたってジャズ界の第一線で活躍しているのがハロルド・メイバーンだ。
参加アルバムも非常に多く、ハンク・モブレーの「ディッピン」、ウェス・モンゴメリーの「ソリチュード」、ジャズテッドの諸作など、ハードバップを愛するファンならコレクションの中に必ず1枚はメイバーンの名を見つけられると言う位の売れっ子ピアニストだ。
それだけに彼のリーダー作の少なさには、驚きを通り越してただただ唖然とするばかりである。サイドメンとしての仕事が忙しすぎたからといっても、この数字はやはりどう考えても理不尽であろう。
メイバーンのプレイには、いつも真剣勝負といった感じがある。ハードバップの演奏で、ホーンのアドリブの後にピアノが続くと、途端にボルテージが落ち、何となく気持ちが緩んでしまうのだが、そうした気持ちの抜けを許さないようなところがある。一音入魂と呼ぶに相応しい彼の演奏は、早いテンポでもバラードでも、常に緊張感が保たれているのだ。
メイバーンのリーダー作のうち、最初の4枚はプレスティッジへのものだ。第2作目の「レイキン・アンド・スクラッピン」はOJCで再発され入手可能だが、ツイン・テナーの処女作「ア・フュー・マイルズ・フロム・メンフィス」や晩年のリー・モーガンがヒューバート・ローズとフロントも務めた「グリーシー・キッド・スタッフ」などは長らく入手困難であり、こちらのほうの再発も期待したいところである。
またリーダー作「ジョイ・スプリング」では初のソロピアノを見せるが、相変わらず気合の入ったところを見せている。
どんな早い指さばきでも放たれる音はずしりと重い。
この重量感、緊張感こそがメイバーンの魅力なんだと改めて感じる作品。
80歳を超える今でもライブやアルバム制作などを現役で続ける数少ない生ける伝説のうちのひとりだ。